Q&A


罪を犯した障がい者、高齢者に関すること


Q. 福祉の支援を必要としている方は、どれくらいいますか?

A. 知的障がい者(疑いを含む) 高齢者(65歳以上) 22.9 7.2

知的障がいとされる「知能指数69以下」の新規受刑者は毎年全体の2割強を占めています。平成18年は9,328人(テスト不能含む)でした。(「矯正統計年報平成18年」)。

 

一方、全国15庁(再入者や犯罪傾向の進んだ者を収容する刑務所11庁、初入者や犯罪傾向の進んでいない者を収容する刑務所4庁)の刑務所を対象にした法務省の調査によると、知的障がい者(疑いも含む)の受刑者410人(以下「平成18年特別調査対象者」)の内、療育手帳の所持者はわずか26人にとどまっています(「刑事施設、少年院における知的障害者の実態調査について平成18年法務省特別調査」)。

 

また、65歳以上の「高齢者」の犯罪も増加傾向にあります。平成20年の高齢入所受刑者は、調査を開始した昭和59年の9.2倍増の2,092人です(「犯罪白書平成21年版」)。平成18年の高齢受刑者数12.3%は、同じく高齢化が進んでいる韓国3.5%、米国5.4%と比較しても突出しています(「犯罪白書平成20年版」)。

 

Q. どんな罪を犯しているのですか?

A. 罪名(高齢・知的障がい者ともに)第1位 窃盗、第2位 詐欺

最も多い罪名は高齢者・知的障がい者共に「窃盗」、続いて無銭飲食、無賃乗車等も含まれる「詐欺」です。

 

知的障がい者の犯罪動機は「困窮・生活苦」が368%で最多。高齢者の犯罪増加の要因である「窃盗」の動機は男性が「生活困窮」、女性では「対象物の所有」「節約」が多いです。(「犯罪白書平成20年版」「刑事施設、少年院における知的障害者の実態調査について平成18年法務省特別調査」)

Q. なぜ罪を繰り返してしまうのですか?

A. 退所後の支援の乏しさが原因です。

高齢者・知的障がい者に共通しているのは、満期出所の多さです。平成18年の全体の仮出所率526%に対して、特別調査対象者の知的障がい者の仮出所率は200%、また、高齢者は295%となっています。(「犯罪白書平成21年版」「刑事施設、少年院における知的障害者の実態調査について平成18年法務省特別調査」)

仮出所には帰住地や身元引受人が必要です。しかし、特別調査対象の知的障がい者も高齢者もその多くが、満期出所後の帰住予定先が「その他」「未定・不詳」となっています。

 

 

新規受刑者と療育手帳所持者の差から明らかな通り、福祉の支援が受けられないが故に軽微な犯罪を繰り返す「負のスパイラル」に陥ってしまっています。特別調査対象の知的障がい者では692%、高齢者では493%が前回の退所から1年未満に再犯に至っています。(「犯罪白書平成20年版」「刑事施設、少年院における知的障害者の実態調査について平成18年法務省特別調査」)

地域生活定着支援センターに関すること


Q. 地域生活定着支援センターの設置根拠は何ですか?

A.地域生活定着支援センターは、厚労省社会・援護局の「地域生活定着支援事業実施要領」「地域生活定着支援センター事業及び運営に関する指針」を根拠としています。定着支援センターの実施主体は都道府県で、社会福祉法人やNPO法人などに委託できます。

Q. 地域生活定着支援センターはどのような事業をおこなっていますか?

A. 矯正施設入所中或いは既に矯正施設を出所した障がい者・高齢者の中には、福祉的な支援を必要とする方たちが少なくありません。

地域生活定着支援センターでは、それら対象者が地域社会の中で円滑に福祉サービス(障がい者手帳の発給、社会福祉施設への入所など)が受けられるよう、保護観察所や関連機関と協働して社会復帰を支援しています。

また、令和3年度より、矯正施設入所者・出所者だけに限らず、被疑者・被告人となった障がい者・高齢者や不起訴・執行猶予等となった障がい者・高齢者に対しても、同様の支援を進めているセンターもあります。

 

 詳しくはこちらをご覧ください。  

Q. なぜ、このような事業が必要ですか?

A. 必要とする福祉の支援を受けられないために、矯正施設の出所者が厳しい現状に直面していることや、彼らのニーズに応じられる支援体制・制度が欠如していることにかんがみると、地域生活定着支援センターは緊急に必要な事業です。

 

法務省の調査によると、毎年、刑務所から出所する受け入れ先のない満期釈放者は約7200人、そのうち1000人あまりが高齢や障がいのため自立が困難で、福祉を必要とされている方々です。調査では、刑務所や少年院などの矯正施設には、本来は福祉サービスが必要だったのに、見過ごされてきたお年寄りや障がいのある方が数多くいることや、この方たちが犯罪に至った主な理由は「困窮・生活苦」だったことが明らかになっています。

 

刑期を終え出所したが、親族などの受け入れ先がなく、自力で必要な福祉サービスにたどり着けない人たちは、たとえば無銭飲食で再犯というように、再度刑務所へ行くことになるリスクが高いことがわかっています。

 

「地域生活定着支援事業」は、高齢・障がいにより、福祉的な支援を必要としている、矯正施設からの退所予定者・退所者に対し、矯正施設に入所中から退所後直ちに福祉サービスにつなげるための準備を、また、被疑者・被告人となった障がい者・高齢者や不起訴・執行猶予等となった障がい者・高齢者に対しても、同様の支援を保護観察所と協働して進めます。

 

各都道府県の地域生活定着支援センターが、矯正施設・保護観察所と協働・連携し、矯正施設退所後の社会復帰を支援し、再犯防止対策に資することを目的としています。地域生活定着支援センターの重要な業務のひとつは、コーディネート業務であり、福祉サービスの確保や住居の設定など福祉的手立ての検討を行い、本人のニーズにつながる福祉サービスの調整を行うことです。

 

 

Q. 地域生活定着支援センターの支援の流れは?

A. まず、保護観察所と矯正施設が協働して対象者を選定し、地域生活定着支援センターに情報を提供、出所後の支援について相談・依頼します。

それを受けて地域生活定着支援センターは、対象者との面談によりニーズを把握(アセスメント)し、必要に応じて他の都道府県地域生活定着支援センターと連絡・調整をします。

最終的に該当する都道府県の地域生活定着支援センターが、更生保護施設、救護施設などシェルター機能を有する中間施設を利用して帰住地の調整支援をし、円滑な地域生活への移行を図ります。同時に、定着支援センターは本人の特性に応じた、必要な福祉・医療のサービスを整えます。

その後、単身アパート生活や施設での生活が始まってからも、定着支援センターは受け入れ先の施設や福祉事務所などから、引き続き相談を受け、フォローアップをして支援していきます。

 

これらがコーディネート業務及びフォローアップ業務で、そのほか、刑務所退所者や家族、市町村などからの相談を受け、支援を行う相談支援業務もあります。

Q. 地域生活定着支援センターのこれまでの実績は?

A. 令和2年度地域生活定着支援センターの支援状況(厚労省ホームぺージ)によると、令和2年度に全国の定着支援センターがコーディネートした事例は1,486名です。そして、そのうちの767名が特別調整で、平成24年度から増加傾向にあります。(令和3年度犯罪白書による)さらに、定着支援センターが抱えるフォローアップ業務も2,327名、相談支援業務も1,415名と年々増加傾向にあります。


全国地域生活定着支援センター協議会(全定協)に関すること


Q. 全定協は地域生活定着支援センターをどのようにサポートしていますか?

A.情報を共有化し、支援業務の標準化を促進することにより、支援体制の格差を軽減し、同時に全般的な支援業務の質の向上を目指し、実効性のある円滑な連携支援を可能にします。

そのために全国地域生活定着支援センター協議会では、各都道府県の地域生活定着支援センターが日々直面している問題の改善に向けて、法務省や厚生労働省の担当者も含めた全会員との話し合いの場を設け、国への要望をまとめ、また、業務に関わる職員のための研修を企画・実施し、その中枢となって各都道府県の地域生活定着支援センターを支援しています。

Q. 全定協の財源はどのようになっていますか?

A.  全定協は会員制をとり、その会費と国の補助金を毎年申請し、組織運営の基盤としています。組織としての自立性を確立し、啓発・連携・協働を促進するためにも、多くの方にご賛同いただき、 賛助会員になって支えていただきたいと願っています。

地域生活定着支援センター事業の趣旨に賛同し、全定協を応援していただける個人や団体・企業の方々を「賛助会員」として募集しています。あなたの思いを、私たち地域生活定着支援センターの思いとともに対象となる人たちに届けます。共創で見えてくるすばらしい未来を一緒に実現しましょう!