事例


入口支援


事例1) 「弁護士の”気づき”を被疑者等支援業務で活かした事例」
依頼元  弁護士→定着→検察庁→保護観察所
年齢・性別  50代・男性

障害種別

 障がい(精神)

現病歴

※既往歴

 統合失調症(精神障害者保健福祉手帳2級)

 (本件簡易鑑定では「反社会性パーソナリティー障がい」の診断)

罪名

 窃盗(執行猶予4年)

◆成育歴・生活歴

 両親、2人兄弟の長男として育つ。中学校卒業後、親元を離れて高校に進学したが、立て続けに喫煙が見つかり、高校1年秋に退学処分。退学後は、トラックの運転手、建築関係の作業員等を転々とする。同じ職場は、長くて1年の就業期間。20代初めから窃盗で受刑を繰り返し、30代後半に殺人未遂事件を起こすが、心神喪失により不起訴。統合失調症の診断を受け、精神科病院に7年ほど措置入院となる。その後は、入院・通院の生活となる。入院中に精神障害者保健福祉手帳を取得、生活保護受給開始となり、退院後は、グループホームを転々としていた。

◆支援前の状況

 就労継続支援B型事業所に通いながら、グループホームで生活していたが、タバコ等に生活保護費を使い過ぎてしまい、月末になりお金が足りなくなってしまった。施設の利用料や携帯電話の料金も滞納していた。服薬もきちんとされていなかった。携帯電話料金の督促状が来て、人生が嫌になってしまい、お金欲しさに、グループホームの食堂にあった職員の鞄の中から財布などを盗む。

◆経過

1 起訴前

【勾留満期2週間前】

  国選弁護人から、「相談依頼書」()を用いて、地域生活定着支援センターに相談がある。

 「起訴猶予で釈放の可能性があるが、余罪もあるのでどうなるかわからない。もし釈放されても、本人が逮捕前に利用し

 ていたグループホーム、就労継続支援B型事業所には戻れなさそう。地域生活定着支援センターも本人に会ってもらい、

 本人が逮捕前に利用していた福祉事業者にも連絡を取ってもらって、釈放後の生活を考えてほしい。」とのこと。

 

  地域生活定着支援センターから、本人が逮捕前に利用していた福祉事業者に連絡をする。

 「就労継続支援B型事業所には、工賃の前借で15万円の借金がある。就労継続支援B型事業所としては、訴訟の準備をし

 ている。」とのこと。

 「グループホームには、一度も利用料を納めたことがない。金銭管理をしようと通帳を預かったが、本人が知らない間に

 通帳の再発行をしてしまい、金銭管理ができなかった。以前のグループホームとは、勝手に契約を解除してきたようで、

 行くあてがなく、就労継続支援B型事業所の理事長のお願いでこのグループホームに来たので、もし釈放されても、再度

 の受入はできない。」とのこと。

 

  地域生活定着支援センターが、警察署(留置場)で本人と面接。

 「利用していた就労継続支援B型事業所は、肉体労働で大変だった。これからは椅子に座っての軽作業をしたい。病院も

 変わりたい。タバコを1日1箱半吸ってしまったり、競馬をしたり、自分では金銭管理ができなかった。今後は、グループ

 ホームで金銭管理をお願いしたい。」とのこと。

  地域生活定着支援センターから、釈放後の更生緊急保護の利用も視野に入れて、いくつかの福祉事業所に相談をしてみ

 ることを、国選弁護人に報告。

 

 ※「相談依頼書」とは

  県の弁護士会と地域生活定着支援センターとで独自に作成した、弁護士から地域生活定着支援センターへの支援依頼の

 様式。この様式は、県の弁護士会の会員ページからダウンロードできるようになっており、弁護士が記入をして地域生活

 定着支援センターにファックスをすれば、地域生活定着支援センターが、まずは「相談支援業務」として、釈放後の支援

 を検討する仕組み。弁護士の皆様の“気付き”を、福祉の支援にフル活用していただけるようにするための、1つのツールと

 して運用。

 (各都道府県の地域生活定着支援センターが、一律にこのような仕組みを導入しているわけではなく、弁護士会との連携

 は、地域の実情に応じて、様々に行われている。)

◆見立て1

・かかりつけ医がおり、精神障害者保健福祉手帳(身分証)を所持している。

 逮捕直前まで障害福祉サービスを利用していた。

 

・逮捕直前まで生活保護を受給していた。通帳もある。ただ、金銭管理に問題がある。

 

・本人の生活歴など、まだまだ不明な点が多く、アセスメントが不十分。そのため、仮

 に起訴猶予で釈放された場合には、即座の問題解決を目指すのではなく、伴走にも価

 値を置き、まずは本人のことを十分に知っていくことも重要。

 

・釈放後は、本人と関係性を構築しながら、移行先を検討していく。


【勾留満期前日】

 国選弁護人から、地域生活定着支援センターに「起訴された」との連絡。

 

2 起訴後

【公判50日前】

  国選弁護人から、地域生活定着支援センターに「精神鑑定書」「犯罪経歴照会結果報告書」「受給者証の写し」「精神

 障害者保健福祉手帳の写し」の提供があった。医師の意見など、福祉の支援において参考になる情報が得られた。

◆見立て2

・グループホームと就労継続支援B型事業所の利用を希望しているが、釈放後すぐ利用できる

 事業所がない。釈放後は更生緊急保護を利用し、それから地域に移行していくことが現実

 的である。

 

・不満を受け止める体制作りが重要である。服薬もきちんとできるように支援していく。

 

・金銭管理を支援者に依頼することに前向きである。金銭管理のスキルを高めていくことが重

 要である。

 

 地域生活定着支援センターから、国選弁護人に、調整状況の通知を書面で送付する。釈放された場合には、更生緊急保護を利用する可能性が高いことを、弁護士を通じて検察庁に伝えてもらう。

 

 


【公判】

  証人尋問で、地域生活定着支援センターがこれまでの経過を証言。第1回で結審。次回判決。

 

【釈放2週間前】

  第1回公判直後、保護観察所から地域生活定着支援センターに「被疑者等支援業務」の依頼の連絡がある。拘置所にて

 面接をする日程調整を行う。また、依頼があった旨、国選弁護人に報告をする。「被疑者等支援業務」に切り替えて支援

 を開始する(検察庁・保護観察所とも連携を開始)。

 

  地域生活定着支援センターが、保護観察官同席のもと、拘置所にて面接。釈放後の更生緊急保護の利用、その後に障害

 福祉サービスを利用した地域移行を図ることについて確認する。厚生労働省指定の「福祉サービス等調整計画通知書(被

 疑者等)」を作成し、保護観察所に送付する。

 

【判決日】

  「執行猶予」の判決を受け釈放される。検察庁へ出頭し、保護観察所へ移動。保護観察所にて衣類を提供してもらい、

 更生緊急保護の手続を経て、自立準備ホームに入居。市役所にて住所変更や生活保護の停止解除手続を行う。

 

【釈放後】

  逮捕前に利用していた福祉事業所と荷物の送付の調整、通院先(訪問診療)の調整、相談支援事業所の調整等を進め

 る。

 

  釈放から3日後、外出先で倒れ救急搬送。医師によると「原因不明の痙攣」。10日の入院。生活保護CW、自立準備ホ

 ームの看護師に連絡。退院後、徐々に、就労継続支援B型事業所やグループホームの見学・体験利用を開始する。

  就労継続支援B型事業所や自立準備ホームから、相談支援事業所や地域生活定着支援センターに、「小遣いの前借をお

 願いされた。」・「小遣いの金額に納得していない。」・「他の利用者様に、お金を無心している。」との連絡が入る。

 相談支援事業所や地域生活定着支援センターがフォローをしつつ、保護観察所も「継続的支援」としてフォロー(本人の

 生活を振り返りながら、更生緊急保護利用当初の気持ちを再確認)を行う。

 

  釈放から1か月半後、本人が自立準備ホームから1週間、失踪。生活保護費を受け取りに市役所へ行き、受け取った生活

 保護費を使い果たしてしまった。地域生活定着センターまで辿り着いた本人から、話を伺う。小遣いについての、自立準

 備ホームに対する不満などを関係者で話し合う。

  就労継続支援B型事業所から、地域生活定着支援センターに連絡があり、本人が衣類の購入で困っていることの相談。

 地域生活定着支援センターが関係者と調整をし、本人に借入を許可する提案をする。相談支援事業所が、就労継続支援B

 型事業所とグループホームの利用契約を進める。

 

  釈放から4か月が経ち、地域生活定着支援センターが本人を訪ねると、「B型事業所で友人ができた。」・「母親に電話

 をした。」・「両親に手紙を出した。」との話がある。表情も明るくなっていた。

 

 今後も、ご本人が希望される生活を求めて、福祉の立場からお付き合いできたらと思う。

◆  ◆  ◆

出口支援


事例1)飲酒下で放火を繰り返す軽度知的障がいのある男性
依頼元  保護観察所(特別調整)
年齢・性別  40代・男性

障害種別

障がい(精神・知的)

現病歴

※既往歴

 軽度知的障がい(療育手帳BⅡ:障がい支援区分2)、アルコール依存症、てんかん

※統合失調症 

罪名

建造物等以外放火、建造物損壊

◆成育歴・生活歴

 幼い頃から酒乱の実父から虐待を受ける。5歳の時に両親が別居し、以降は姉妹と共に高校卒業まで児童養護施設で生活するが、施設や学校でいじめを受けていた。小・中・高校とも特別支援学校。高校を卒業後は、地元の内装会社へ就職し、実母と暮らすが、実母の借金が原因で1年ほどで退社を余儀なくされた。その後は、キャバクラの客引きなどで稼働するが、長続きせず、大量飲酒による救急搬送、入退院、自傷行為を頻発する。

 

 その後も対人関係等(特に交際相手)で不満を募らせると、大量飲酒により救急搬送や自傷行為による入退院を繰り返す。そのうちに、飲酒下で放火をするようになる。

◆支援前の状況

 前刑出所時は、頼る親族がなく、出所するとすぐに精神科病院に入院する。約1年の入院を経てインターネット(SNS)で知り合った人を頼り、そのつてで他県で内装工として4か月働いていたが、職場の上司に仕事のことで怒鳴られ、そのストレスを発散するため、酔って他人の敷地内であった物品に放火して捕まった。

 

 親族(姉・妹)は、本人との関りと本人が近辺地域へ帰住することも強く拒否している。

◆見立て

・児童養護施設職員の情報によると、「職員の金を盗むが自分のためには使わず、お菓子を

 買って他の児童に配っていた。」「特別支援学校高等部の時は、生徒会長を担い、バスケッ

 トボール部で活躍し、アルバイト先の店長からは高く評価されており、この時期は問題行

 動がなく落ち着いていた。」とのことから、本人の強い承認欲求が窺われる。

 

・病院からの情報では、「他の患者への威圧的な言動や感情の抑制ができずに病院内の設備を

 壊した。」等があり、過去の交際相手に対する依存性が強い反面、受け入れられないとDV

 や自傷行為に及びやすい、依存と暴力の二面性や過剰反応は、本人の生きる術であり、自己

 承認できない本人が、自己防衛のために身に着けたものと思われる。


・「飲食店では、複雑な注文ができず、いつも1000円のセットメニューだった。」「お金の計算ができない。」との本人

 の訴えから学習障害が疑われる。

 

・放火行為は、「火を見ると落ち着いて自分で火を消すと自分がすっきりする。」、飲酒行為については、「酒を飲むと痛

 みがなくなるから。」と本人は述べ、幼い頃からの共同生活、いじめ、子の尊厳が守られない生活の中で深く傷つき、自

 身が壊れそうになった時には、大量に酒を飲み、善悪共に神経を麻痺させ、「放火~消火」で一時的な自己解決をしてき

 たものと考えた。

 

・本人にしてみれば、理不尽で暴力的な環境下で擦り切れるような思いで生きてきた。その根源的な魂の痛みに寄り添わな

 ければ支援は難しいと感じた。

◆コーディネート

 刑務所にて本人と面接を重ね、本人にこれまで関わりのあった関係機関(市、精神科病院、ハローワーク、社会福祉協議会、相談支援事業所、救護施設、矯正施設、保護観察所、更生保護施設、児童養護施設等)から情報収集を行う。受診歴のある精神科病院に受診相談を行うが、本人の従前の態度から受診を断られる。本人の帰住先について、救護施設、更生保護施設、自立準備ホームに入所の相談を行うが、「放火」を主な理由に不可となった。また、本人の出所後の面接や心理相談、行動分析を少年鑑別所に協力要請を行った。

 

 その後、地域生活定着支援センターのケースの受け入れ実績のあるグループホームに入居相談したところ、「犯罪名はこだわらない。」としつつも、体験宿泊をしたうえで判断したいので他施設を経由してほしいと言われる。そのため、地域生活定着支援センターとわずかなつながりがあったシェルターに相談すると、本人に対する理解を示してくれたが、1週間限定という条件が示される。そして、グループホーム、シェルターの各代表者と本人が面会を行い、ようやく受け入れが決定した。

 

 受入れ先の調整は、「放火」を理由に調整が難航し、改めて「放火」が地域に与えるダメージの深刻さと犯罪名ばかりがフォーカスされ、その行為に至る理由については汲み取られない現実を思い知った。

◆フォローアップ

 出所後は、シェルターに帰住し、1週間後にグループホームへ入居。日中は、就労継続支援B型事業所と地域活動支援センターを利用し、週1回のメンタルクリニックを受診。不定期で余暇活動の支援を行った。

 

【出所後~3ヶ月】

 ・障害福祉サービス、生活保護、障害年金、日常生活自立支援事業(金銭管理)、負債整理等諸手続きの支援

 ・週1回のメンタルクリニックの通院同行

 ・少年鑑別所の心理相談(所見は関係者で共有)

 ・週1回の面談(本人にとって、大きく環境が変わる時期で不安定になりやすいため頻回な面接を心掛ける。)

 ・出所直後の心因性てんかん発作による救急搬送、夜間の飛び出しに対する緊急対応

 ・支援者会議の開催(メンタルクリニック・少年鑑別所から得た心理面に関する助言を情報共有し、支援方針に反映)

 ・余暇活動の支援(外出支援として海釣りや映画鑑賞を月1回程度)

 

【3ヶ月~半年】

  環境が整い、生活も落ち着きを見せ、支援チームと本人の関係も安定し、支援チームの中心は、定着から専門員へ移行

 する。就労継続支援B型事業所では、本人が得意とする縫製の仕事に意欲的に取り組み、内外から高く評価されたことで

 就労継続支援A型事業所にステップアップする方向となる。地域生活定着支援センターの面談も、月1回程度となり、余暇

 支援も3ヶ月に1回程度になる。

 

【半年~1年】

  メンタルクリニックの通院が単身自力で隔週に。グループホームや就労先での人間関係の悩みに関して、抱え込むこと

 なく支援者に相談し助言を求め、自分なりに解決に向ける姿が見られる。1年がたち、生活は安定し支援チームは即時即

 応に機能していることから、地域生活定着支援センターの支援は終結の方向へ。

◆  ◆  ◆

事例2)地域住民と本人の関係性をはぐぐむために支援に地域住民の参画が得られた事例
依頼元  保護観察所(特別調整)
年齢・性別  50代・男性

障がい種別

障がい(知的)

現病歴

※既往歴

 軽度知的障がい(手帳無:障がい支援区分2)、アルツハイマー型認知症

※うつ病

罪名

窃盗

◆成育歴・生活歴

 厳格な両親のもとに2人兄弟の第1子として育つ。学童期は、普通学級で学習するが、学年が進むにつれて学業の遅れが見られ、小柄であることや体力が乏しかったとこでからかわれ、いじめを受ける。成績不振により高校進学はせず、中学校卒業後は、父親のもとで底引き網漁などの漁師見習いとして働くが、本人が独立操業ができる習熟度は得られず。本人が41歳時に父親が亡くなり、生活保護を受給し母と二人暮らしとなる。

 本人が50代になり、母親が長期入院となり一人暮らしになると、日用品等の窃盗行為を行うようになる。

◆支援前の状況

 矯正施設入所中から、認知症によるBPSDと思われる排尿、弄弁行為、幻聴があり、言語能力の稚拙さから他者との意思疎通や意思決定に配慮が必要だった。

 本人の意向は、地元に帰り一人暮らしをしながら入院中の母親を見舞いたいとのこと。

 本人の住居は市営住宅で、地域住民の顔ぶれは固定しており、地域住民は、本人の累犯や生活状況を知っており、帰住には否定的な反応があった。

 

 弟は連絡可能だが、片道2時間の市町村に在住しており、実母は施設入所中。

◆見立て

・BPSDの状態から、出所後すぐに自宅での独居は難しい。

 

・少年期から壮年期まで、両親による家庭内での養育・監護が行われていた。父親の他界、

 母親の長期入院を経て、本人の生活課題が地域住民に認識されるとともに行動(窃盗)を

 とおして警戒されることになり、地域での孤立が生じている。


◆コーディネート

 本人の意向は、以前生活していた公営住宅にて単身生活であった。しかし、BPSDの状態から、出所後すぐ単身での生活は困難と判断し、本人の状態評価や服薬コントロールのため、かかりつけ医に入院調整を行う。

 入院相談の結果、管理・指示的環境で閉鎖的な生活が長期間続いているため、何らかの拘禁症状を呈しているのではないかとの見解を得、出所日当日から任意入院としてかかりつけ医で受け入れ可能となる。

 

 入院経過を確認しながら、本人が住民と円滑な近所づきあいを始められるよう地域のキーパーソンや社会資源の確認を行う。

 

 矯正施設入所中から、認知症によるBPSDと思われる排尿、弄便行為、幻聴がある。認知症は、矯正施設入所前後での変化が見えないので、調整が難しかった。

◆フォローアップ

 医療機関PSWが中心となり、障がい福祉サービスの支援体制の調整を行う。地域生活定着支援センターが中心となり、地域のキーパーソンを含めた支援会議を開催する。

 退院前には、家屋、周辺環境の確認等を行う。

 退院後に、本人宅近隣にて観賞用植物の盗難がある。事情聴取されるも、近隣住民が身元引受人となり釈放された。

 既存の支援体制(フォーマルな支援)に、民生委員・区長・近隣住民(インフォーマルな支援)が参加することで、住民の不安や本人の変化について、情報収集、関係機関の迅速な対応に繋がった。さらに、身元引受人にもなってくれて、本人の行動に異変があった際には、近隣の住民や福祉、医療機関と共有し本人の状況把握もできやすくなった。

 

 定期的に訪問を行っている。

◆  ◆  ◆

相談支援


事例1)判決後、釈放となりセーフティネット住宅に居住し更生した高齢者の事例
依頼元  国選弁護人(弁護士)
年齢・性別  70代・男性

障害種別

高齢

現病歴

 高血圧、認知症の疑い(要介護認定:なし)

罪名

窃盗

◆支援前の状況

 月11万円の老齢厚生年金でアパートで一人暮らしをしていたが、ギャンブル・飲酒等で浪費し、家賃を滞納しアパートを退居となる。その後、ホームレスとなり、街中を徘徊していたが、所持金がなくなりスーパーで食品を窃取し、逮捕され、起訴猶予となる。

◆経過

【公判45日前】

  国選弁護人から、地域生活定着支援センターに「家族・親族からの支援が見込まれず、居住場所や福祉サービスについ

 ての調整を本人が希望している。」と相談が入る。

 

【公判41日前】

  弁護人同席のもと、警察署で本人と面接し、本人の事件への気持ちや釈放後の生活の希望を確認し、地域生活定着支援

 センターが支援することについて本人の同意を得る。そして、本人の希望を受け、地域包括支援センターや行政等から情

 報を集めるとともに、国選弁護人から親族への相談を勧めた。

 

【公判31日前】

  弁護人同席のもと、本人との面談も重ね、成育歴や生活歴を聞き取りアセスメントを行うとともに、本人の気持ちに変

 化がないか確認を重ねる。

 

【公判11日前】

  弁護人同席のもと、本人との面接を行い、釈放後は福祉サービスを利用しながら生活することの説明をし、意向を確認

 する。

  地域生活定着支援センターが見立てた内容を更生支援計画に記載する。

◆ 見立て

・面接時、質問事項に回答がちぐはぐなこと、これまでの単身生活において、金銭管理が

 不十分であり、窃盗に繋がっていることから福祉サービス利用が必要であると判断する。

 

・家族や親族からの支援や、同居は不可能であることから福祉施設等の調整を行う。また、

 要介護認定調整の申請と医療機関の調整を行う。


【公判日】

  翌日が判決日となる。

 

【判決日】

  「罰金刑」の判決を受け釈放される。被告人段階で要介護認定調査を依頼したが、医師意見書作成の受診に繋がらず、

 介護施設利用が困難であり、養護老人ホーム入所にもつながらなかった。妹夫婦が身元引受人、緊急連絡先の協力をし

 てくれたことで、釈放後は、セーフティーネット住宅に入居できた。

 

【釈放後】

  通院先の調整、必要な福祉サービスの手続き(要介護認定調査、介護サービス利用申請等)を進め、デイサービス利用

 により本人は落ち着いた生活を送っている。

 

  当該セーフティネット住宅は、散歩、外出等も可能で、看護師も配置されており、医療機関への定期通院も可能なこと

 から、本人の満足感、妹夫婦への安心感につながっている。

 

  短期間での調整で、本人を理解することや手続きを進めることには時間が足りない面もあったが、国選弁護人や妹夫婦

 などの協力を受け、本人の希望に沿うことができた。

◆  ◆  ◆